2008年度(平成20年度) アプリケーションエンジニア(AE)の論述問題の合格解答に引き続き、今回は2010年度(平成22年度) プロジェクマネージャ(PM)の論述試験の合格解答を晒してみようと思います。
前回と同様、完全に書いた内容を暗記しているわけではないので、当時のメモ書きをベースに書き出してみたというものになります。
【問題】IPAのサイトの過去問題のページから、
問題冊子のPDFをDLできます。
3問あるうち、私は
問1 を選択しました。
最初に問1の内容をざっと見て「これいける!」と思ったので、問2と問3はサラッとだけ見てすぐ問1に決めた記憶があります。
過去問題のページから削除されてしまう可能性があるので、念のため抜粋して以下に書いておきます。
問1 システム開発プロジェクトのリスク対応計画について
プロジェクマネージャ(PM)には、システム開発プロジェクトのリスクを早期に把握し、適切に対応することによってプロジェクト目標を達成することが求められる。
プロジェクトの立ち上げ時にリスク要因が存在し、プロジェクト目標の達成を阻害するようなリスクが想定される場合、リスクを分析し、対策を検討することが必要となる。
プロジェクトの立ち上げ時に存在するリスク要因と想定されるリスクとしては、例えば、次のようなものがある。
・採用した新技術が十分に成熟していないことによる品質の低下
・未経験の開発方法論を採用したことによるコストの増加
・利用部門の参加が決まっていないことによるスケジュールの遅延
PMは想定されるリスクについては定性的リスク分析や定量的リスク分析などを実施し、リスクを現実化させないための予防処置や、万一現実化してもその影響を最小限にとどめるための対策などのリスク対応計画を策定し、リスクを管理することが重要である。
あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。
設問ア あなたが開発に携わった開発プロジェクトの特徴とプロジェクト目標について、800字以内で述べよ。
設問イ 設問アで述べたプロジェクトの立ち上げ時に存在したリスク要因とプロジェクト目標の達成を阻害するようなリスクは何か。また、リスク分析をどのように行ったか。800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
設問ウ 設問イで述べたリスク分析に基づいて策定した予防処置や現実化したときの対策などのリスク対応計画と、その実施状況および評価について、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
【解答】設問ア あなたが開発に携わった開発プロジェクトの特徴とプロジェクト目標について、800字以内で述べよ。
※ 文字数が計算しやすいよう、実際の解答用紙と同じ「1行=25文字」で書いています。
1111111111222222
1234567890123456789012345
01 1.プロジェクトの特徴
02 Z社は組み込み機器向けのWeb閲覧システムの開発
03 を行っており、主に携帯電話向けの事業をメインとして
04 いる。B社は製造メーカーであり、通信事業者A向けの
05 携帯電話を開発している。以前から、B社の携帯電話機
06 はZ社のWeb閲覧システムを搭載しているが、Z社か
07 らはWeb閲覧システムエンジンのみを提供し、アプリ
08 ケーションはB社が独自で開発していた。今回、B社が
09 コスト削減のため、Z社にアプリケーショも込みでWe
10 b閲覧システムを提供するよう要求し、Z社はエンジン
11 のみでなくアプリケーションも一緒に提供することとな
12 った。私はZ社のプロジェクトマネージャとして開発に
13 携わった。
14 2.プロジェクト目標
15 通信事業者Aは毎年決まった時期に携帯電話機を販売
16 しており、本プロジェクトの携帯電話機についても、販
17 売時期が確定している。そのため、B社の携帯電話機の
18 納期厳守は必達であり、Z社としてもWeb閲覧システ
19 ムの提供について納期を厳守しなければいけない。
20 また、Z社としては今までのエンジン提供のみとは違
21 い、アプリケーション込での提供することになるため開
22 発規模が多くなる。開発人員も多くなるが、コストを確
23 実に予算内に抑えるよう、事業部長より指示があった。
25文字×23行=575文字ですね。指定の800文字以内です。
ちょっと少なめな気もしますが、まあこれで合格したわけなので、題意に沿った「プロジェクトの特徴」「プロジェクト目標」がきちんと記述されていれば問題ないと思います。
設問イ 設問アで述べたプロジェクトの立ち上げ時に存在したリスク要因とプロジェクト目標の達成を阻害するようなリスクは何か。また、リスク分析をどのように行ったか。800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
※ 文字数が計算しやすいよう、実際の解答用紙と同じ「1行=25文字」で書いています。
1111111111222222
1234567890123456789012345
01 [リスク要因と想定されるリスク]
02 1.<リスク要因>Z社にはWeb閲覧アプリケーショ
03 ン用のフレームワークがあるためそれを使おうとしたが、
04 チーム内に経験者が不足していた。
05 <想定されるリスク>開発コスト増加
06 2.<リスク要因>Web閲覧システムのエンジンの最
07 新版の品質が不十分
08 <想定されるリスク>不具合多発による開発コスト増加、
09 納期の遅延
10 3.<リスク要因>Web閲覧アプリケーション用フレ
11 ームワークに最新バージョンのエンジンを組み合わせた
12 実績がまだない
13 <想定されるリスク>品質の低下、不具合発生時のエン
14 ジン/フレームワーク/アプリケーションのどの部分が
15 原因かの切り分けのコストが増大
16 [リスク分析の内容]
17 <1.のリスクについて>
18 過去にWeb閲覧アプリケーション用フレームワーク
19 を使ったプロジェクトの関係者にヒアリングを実施した
20 結果、過去にWeb閲覧アプリケーション用フレームワ
21 ーク利用者向けの技術講義が行われており、その時の講
22 義内容がビデオに録画されていたことが分かった。また、
23 要望があればフレームワーク開発チームのメンバによる
24 技術講義を行うことも可能とのことだった。
25 これらの情報をもとに、過去の技術講義のビデオを使
26 った勉強会を行い、状況に応じて追加の技術講義の依頼
27 を出すことを検討した。
28 <2.のリスクについて>
29 Web閲覧システムのエンジン開発チームにヒアリン
30 グし、以下の情報を入手した。
31 ・エンジンの最新版より1つ前のバージョン(旧版)は
32 安定している
33 ・もう数ヶ月すれば最新版も安定する見込みである
34 ・エンジンのAPIについてはほとんど変更がないため、
35 旧版から最新版にバージョンを上げる際にはアプリケー
36 ション側はほとんど変更が不要
37 これらの情報から、ひとまずは旧版のエンジンを使っ
38 て開発を行い、最新版が安定したあとで差し替えを行う
39 のがよいと判断した。もし最新版の安定化が予定通り進
40 まない場合は、旧版のまま出荷することを検討した。
41 <3.のリスクについて>
42 Web閲覧アプリケーション用フレームワークの開発
43 チームにヒアリングを実施し、以下の情報を入手した。
44 ・エンジン側でAPIの変更がほとんどないのであれば、
45 フレームワークと組み合わせたことで発生する不具合の
46 ほとんどはエンジン側のはず
47 ・旧版のエンジンとフレームワークの組み合わせでは、
48 採用実績が多く既知の不具合はないため、品質は安定し
49 ている
50 これらの情報をもとに、2.のリスクと同様、ひとま
51 ずは旧版のエンジンを使って開発を行い、最新版が安定
52 した後に差し替え行うのが良いと判断した。
25文字×52行=1300文字です。指定の800字以上1,600字以内に収まっています。
見出しを[xx]と書いたり、項目を見やすくするため<xx>と書いたり、「・」を使って箇条書きにしたりと、記号をうまく使ってています。
実際の本番でもこのように書きました。
字数稼ぎというのも少しありますが、このような形式で書いたほうが圧倒的に見やすくなると思います。
逆にこれらの記号を一切使わないで記述するとなると、だいぶ見づらくなるのではないでしょうか。
設問ウ 設問イで述べたリスク分析に基づいて策定した予防処置や現実化したときの対策などのリスク対応計画と、その実施状況および評価について、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
※ 文字数が計算しやすいよう、実際の解答用紙と同じ「1行=25文字」で書いています。
1111111111222222
1234567890123456789012345
01 [リスク対応計画]
02 1.<予防処置>フレームワーク利用者向けの技術講義
03 ビデオで勉強会を行うよう、技術リーダに指示
04 <リスクへの対策>技術講義ビデオだけで不足する部分
05 について、フレームワークチームに技術講義を依頼
06 2.と3.<予防処置>旧版のエンジンを使ってアプリ
07 ケーションを開発し、最新版が安定したあとに差し替え
08 るようにする
09 <リスクへの対策>最新版のエンジンの安定化が遅延し
10 た場合は、旧版エンジンのままで出荷する
11 [実施状況と評価]
12 1.については、過去のフレームワーク技術講義ビデ
13 オによる勉強会を行ったおかげで、スケジュール通りに
14 進めることができた。もしこの勉強会を行わなかった場
15 合には、相当苦労したであろうと技術リーダから話がき
16 ており、うまくリスク低下できたと思う。また、開発工
17 数も削減でき、コストを予算内に納めることができた。
18 2.と3.については、最新版のエンジンの開発が遅
19 れており、品質が安定化しなかった。旧版を使ってアプ
20 リケーション開発を行っていたため、アプリケーション
21 開発のスケジュールへの影響は出ていない。もし最新版
22 のエンジンを使っていた場合、エンジン側の不具合のせ
23 いでアプリケーションの実装ができなかったり、不具合
24 の切り分けなどで余計な工数がかかり、スケジュール遅
25 延が発生してたと思われる。
25文字×25行=625文字です。指定の600字以上1,200字以内に収まっています。ギリギリですがw
実際の本番では、時間がギリギリで本当に焦っていて、「アプリケーション」を「アプリ」と書いたりしていた記憶があります。
その結果、「600字以上」の指定の文字数が足らず、ギリギリラインの24行目に「 以上。」みたいなのを入れて無理やり誤魔化しましたw
本当に焦りましたね、「 以上。」の「。」を書いた瞬間に、試験官から「はい、やめてください。筆記用具を置いてください。」と言われた記憶があります。
ヒヤヒヤもんですね。
無理やり感がありますが、これでも合格してるので「アリ」ということだと思います。最後まで諦めないのが大事ですね。
以上、記憶を掘り起こして、書き出してみました。内容的にはほぼこんな感じで書いていたと思います。
実際には、本番ではAEの時と同様、
・字は汚く、
・おそらく誤字脱字もあり、
・さらに漢字書けなくて平仮名で書いたり
・文字数制限を満たすためだけのの苦しい「 以上。」だけの行があったり
と、とても読みづらい酷いものだったと思いますが、
採点官がちゃんと内容読んで採点してくれたことに感謝するしかないですね。
長かったですが、以上、2010年度(平成22年度) プロジェクマネージャ(PM) の午後IIの合格解答でした。